一昔前と違って、現代はほとんどの子供が塾に通った経験があるようです。
中学校や高校で聞けば、クラスの大半が塾に通っている、ということも珍しくありません。
保護者の皆さんも子供の塾をどう選ぶかは大きな問題だと思います。
しかし、保護者の皆さんは、塾の中を直接知る機会は意外と少ないように感じています。
それゆえに、どうやって塾を選べばいいかよくわからない、という保護者の方も多いと思います。
なので、本記事では、現役塾講師の目線から保護者が注目すべき塾選びのポイントを紹介します。
この記事では、
塾選びを5つのポイントから、現役塾講師目線で紹介します。
その判断の仕方まできちんとお伝えします。
よくある塾の選び方
塾講師目線の塾選び、の前に、よくある選び方を紹介します。
そして、なぜこの選び方をしないのかを説明していこうと思います。
新聞の折込チラシで選ぶ
新聞を購読しているとチラシが入っていると思います。
いわゆる、広告ですね。
広告がある ⇒ それだけお金もあるし有名なんだ ⇒ 安心、ここにしよう!
この流れ、実は結構多いんです。
広告がきっかけなのは否定しません。
否定しませんが、よ~く下調べしてみてください。
以前私は数十教室を持つ大きなチェーンの塾の一教室にいました。
大きくなればなるほど、組織は全体を管理しにくいのかもしれません。
広告にこう書いてあったのに…という声を耳にすることも何度かありました。
私としては、
「確かに書いてあったけど、本部(本社)が決めたことでそのまま実行は難しいし、その代案も悪くないんだけどな…」
と、もやもやした記憶があります。
管理しきれない塾全体が悪いのですが、何となく後味悪い気もします。
お互い嫌な思いしないためにも、是非下調べを!
(大前提として、宣言通りにできない塾が悪いですし、これはあくまでも自分が嫌な思いをしないため、です。)
近所にあったからここにしよう
通塾も楽だし、家から近いほうが安心、という考え、よくわかります。
よくわかりますがちょっと待ってください!
これから短くない時間、安くはないお金をお子さんの将来に投資すると考えて一旦距離は置いてみてください。
もう少し足を延ばせば、もっといい塾があるかもしれません。
もう少し通塾時間を増やせば、もっといい環境、いい出会いがあるかもしれません。
結果的に近所の塾になるのは問題ないのですが、塾を決める前にもう少しだけ自分なりに調べてみてください。
近さだけで選ぶのを避けるために、もう一つか二つ項目を準備しておくといいかもしれません。
月謝でも科目でもなんでもいいので、是非下調べをもう少しガンバって見てください。
この項目を調べていくうちに少しずつ、これら以外のことも情報として入ってきますので。
月謝が安いところにしよう
保護者の皆さん、これが非常に大きなメリットなのは痛いほどわかります。
私も保護者面談で夏期講習やテスト対策講座を紹介するとき(売るとき)は、とても心苦しい思いをしています。
もちろん、高ければいいとか、安いからダメということは一概には言えません。
しかし、安かろう悪かろうというのもある種、正しいことも多いのです。
結論としては、お金だけではわからない、という玉虫色の解答になってしまうのが心苦しいところですが、お金しか見ない!という考え方だと実は損してしまう可能性もある、ということは念頭に置いておいてください。
塾選びの5つのポイント
塾選びのポイントはたくさんあるように見えて、大きく5つです。
何を大事にするかはご家庭の方針があると思いますが、大事にすること、優先順位を決めて、これらの項目を意識して比較すればお子さん・親御さんにとって良い選択ができると思います。
その項目は5つです。
① 適した授業
② 優れた進路指導
③ 十分な保護者面談
④ 自習室と質問対応の充実度
⑤ スタッフ間の連携
それぞれについて深堀していきます。
塾選びのポイント①:適した授業
判断するのはとても難しいのですが、分かりやすい授業、ウケのいい授業が適しているとは限りません。
子供が「楽しい」と言う、ということも大事ですが、残念ながら、これが適しているとは少し違います。
「この先生の授業楽しい!」
と子供が言ったとしても、成績が上がらなければ、授業としては失敗です。
あくまでも、講師の仕事は「成績を上げる、学力を上げる」ことです。
講師であってコメディアンや落語家ではありません。
もちろん、楽しいということは非常に大事なことなので、楽しそうに勉強している、というだけでもある程度は適していると言えはします。
しかし、この記事ではあえて、「適した」という部分を深堀してみます。
適した授業とは、文字通り、その子にあった授業を指します。
当然、その子に合っていれば成績は上がりやすいです。
「適した」とはどういうことかというと、その子に合わせて、
・どうやってやる気モチベーションをあげるか
・どの程度教えて、底から一人で取り組ませるか
・その子の将来の夢、希望をきちんと把握してくれているか
・どういったスタイルの授業が好みか
などなど、その子に合わせてアレンジした授業を提供してくれる塾が、「適した授業」を提供できる塾だと思います。
とはいっても、これは判断が非常に難しいです。
そこで、私の経験から少しアドバイスをすると、「自分の子供のことにどの程度耳を傾けてくれるか」をみると、少しわかってきます。
塾に入ることを考えてます!と塾に連絡をすると、面談や体験授業など、何かしらを提案されます。
何を提案されるかは塾次第です。
面談の場合、塾の説明だけして終わり、入塾しますと言ったら教室長や講師と勉強の内容以外話さない、といった塾も実はたくさんあります。
それに比べ、どんなことが好き、将来何になりたい、今の悩み、などなど聞いてくれる塾は、少なくとも新しく来る生徒のことを真剣に考えてくれると思います。
どの程度自分の子供に興味を持ってくれるか、これは実は塾選びで大事な指標になると、私は思います。
ちなみに、私の塾では、生徒に興味を全く示さない先生もいました。
その先生の担当していた生徒はすぐに退塾しましたし、その先生自体も講師は長く続きませんでした…。
また、体験授業の場合は、新しい発見があるかどうか、教え方は自分に合っていそうかなどをお子さんに経験・判断してもらうことができます。
もちろん、数回の授業でその本質は見抜けませんが、参考にはなると思います。
とにかく、まず塾に連絡して、足を運んでみてください。
塾選びのポイント②:優れた進路指導
進路指導で大事なのは、子供の希望通りの学校に進学できるように指導する、だけではありません!
生徒の選択肢を増やすことができ、そのうえで希望の進路へ進める指導が優れた進路指導だと私は考えます。
私が新人の頃は、先輩からどんな指導してるの?という質問を受けました。
その時、自信満々で指導の内容を説明しましたし、これまで説明した人にはとても褒められました。
しかし、その先輩からは、「それだけじゃ足りないよ!」とダメ出しされました。
びっくりしました。
自信満々なだけ、衝撃を受けました。
要約すると、中学生や高校生は将来のことは意外と見えてないし、見てる世界自体が狭いから、その世界を広げてあげることも講師の大事な仕事だ、と教わりました。
入塾前の面談で進路のことを質問してみてください。
「やりたいことが見つかっていないうちの子の場合でも大丈夫でしょうか?」
と投げかけたら、その回答でどういった指導をしているか、そういった指導の経験はあるかが分かると思います。
たしかに、10代のうちからやりたいことがあるって、難しいですよね。
なので、ただ○○高校合格、○○大学合格、だけではなく、視野を広げられるような進路指導は大事だと、私は思います。
※志望校に受かる指導は、大前提です。
塾選びのポイント③:十分な保護者面談
保護者と塾講師がかかわる機会は多くありません。
唯一かかわる機会があるとしたら、保護者面談です。
入試情報の共有会や勉強会を行う塾や予備校もありますが、これは塾のトップが行ったり、外部から講師を呼んで行ったりするので塾講師はほとんどかかわらないケースが多いです。
保護者面談は、受験に関する情報や塾での生徒の様子を伝える大事な機会です。
塾目線で話すと、お金を払ってくれるのは保護者なので、保護者とかかわる機会も非常に大事にします。
他の業界と違い、塾は「お金を払う人(保護者)とサービスを受ける人(生徒)が異なる」ので、それらをつなぐのは「信頼」と「成果」になります。
それゆえに、生徒だけを満足させればいいのではなく、保護者の満足度の向上もとても重要になります。
営業(講習会の案内)以外でも定期的に実施してくれるのは熱心な塾だと思います。
しかし、こちらはご家庭の都合もあると思いますので、保護者の皆さんの好みに合わせていいと思いますが、「いつでもしますよ!」という塾の姿勢は確認する方がいいと思います。
具体的には、ストレートに、
「保護者面談はありますか? どのくらいの頻度でありますか?」
と聞いてください。
私は常に、
「○月と○月の○回は必ず実施し、私か〇〇さん(生徒)、○○さん(保護者)の誰か一人でも必要と感じたらすぐに実施します。」
と伝えていましたし、実際追加の面談は行ったことがあります。
私の個人的な意見ですが、保護者面談を力に入れていない塾はあまり信用できません。
また、夏期講習やテスト対策講座などの追加講習の営業という目的もあります。
私の場合は、自分の授業を数十万の講座として売り込む必要がったため、初めての時は非常に怖かったです。
保護者面談は、めちゃくちゃ緊張します。
私が初めて保護者面談を行ったときは、緊張で常に手が震えてました(笑)。
私の場合はそのくらい緊張していました。
保護者に向けての情報発信になるので、保護者がどの程度受験のことを把握してそうか、どんなことを伝えようか、などを仮定したり決めたりして何時間もかけて準備しました。
同じ高校一年生だから、といったような資料の使いまわしはせず、一人一人に合わせて徹底的に調査し、パワーポイントでまとめて情報の提供や講座の紹介をしました。
「ここまでやってくれた先生がそういうなら受講します」
と、面談の最中に迷わず最も高額の講習会を申し込んでくれた親子もいましたが、それは言葉で言えないくらいうれしかったです。
塾選びのポイント④:自習室と質問対応の充実度
これは比較的評価しやすいですし、コメントも少ないです。
見るべきポイントは、自分の子供にとって十分な環境があるかどうか、です。
例えば、常に家で勉強できるようなお子さんでしたら、自習室が多少心許なくても、質問対応がしっかりしてればいいという考え方もできます。
逆に、家で全然勉強しないお子さんでしたら、優れた勉強環境を提供してくれるという条件は必須になります。
塾に足を運び、自習室を見せてもらってください。
塾に足を運び、質問対応や自習室の塾生の活用している様子を見に行ってください。
成績は、やはり、勉強しないと上がりません。
その勉強をどこでするかは人によりますが、少なくともいつでも対応できる、というのは塾として最低限整えてほしい環境ですね。
質問対応も非常に重要で、疑問をすぐに解決できる環境があるかないかは成績の上がる速さに大きな影響を与えるので、質問に答えてくれる先生が常にいるかどうかは気にしてみてください。
私の場合は、生徒からリクエストがあれば、授業のない休日でも出勤していました。
塾選びのポイント⑤:スタッフ間の連携
これは塾にいるスタッフ全員です。
この連携がないと、塾の質は圧倒的に下がります。
私が通っていた塾ではそんなことはなかったのですが、すべての先生がどの生徒にどの宿題を出したか、などをきっちり把握している塾もあるそうです。
A先生にこういうプリントが塾にあるって聞いたけどどこにあるの?
とB先生に聞いても、
あー、それね、それはここにあるよ、はい!
とすぐ渡せるほど、連携が取れています。
そういう塾は自然と生徒を大事にする文化が根付いていると思います。
ちなみに私が聞いたこの話でのA先生とB先生は別の科目の先生です。
このレベルでの情報共有は本当にすごいと思います。
私のいる塾では無理ですね…。
ここまでとはいかなくとも、スタッフ間の連携は大事だと思います。
これの確認は至難の業です。
少し嫌なやり方かもしれませんが、ある先生から説明されたことを別の先生に質問してみたり、塾のことや別の科目のことなどのその先生の担当以外の質問をしてみると分かると思います。
塾の選び方のまとめ
塾選びのポイントを紹介しましたが、これをすべて満たす塾を見つけることはもちろんですが、それぞれの項目を保護者目線で判断するのはなかなか難しいと思います。
しかし、この記事で紹介したような視点で考えてみたり、優先順位を決めてみたりして、お子さんにあった塾を探してみてください。
どのように判断するにせよ、まずすべきことは塾への連絡、そして実際に足を運ぶことです。
とりあえず電話しましょう!
良い塾に巡り合えることを願っています。