勉強を続けていくと、ほぼすべての人はつまずきます。
その時、何とか解決しようといろんなことを試すと思いますが、解決方法の一つに、教えるのがうまい人に聞く、という方法があります。
分かりやすい説明があれば、明快に理解することができますよね。
だから塾の授業も超わかりやすい授業をする塾が最高の塾だ、と考える人も多いと思います。
しかし、分かりやすいということが常に良いとは限りません。
親としては当然、「良い塾に我が子を通わせたい!」と思うと思いますが…
この記事では、
STEP 1. わかりやすい授業とは何か を塾講師目線でお伝えし、
STEP 2. わかりやすい授業のメリット を紹介します。
そして、
STEP 3. わかりやすいことの弊害 について触れ、
STEP 4. わかりやすい授業のデメリット をお伝えします。
最後に
STEP 5. 保護者ができるフォロー を紹介します。
分かりやすい授業=成績が上がる授業
分かりやすい授業のデメリットの前に、そもそもわかりやすい授業とは何か、わかりやすいと何がいいのかを私なりに説明していきます。
簡単に言えば、わかりやすい授業=生徒の成績が上がる授業と考えていただければ問題ありません。
この視点を意識してこの説明を読んでいただければ理解しやすいと思います。
分かりやすい授業に必要な要素は
① 矛盾がない ② 無駄がない ③ 難しい言葉がない
矛盾がない授業
当たり前ですがわかりやすい授業には論理的矛盾がありません。
この場合は確かに教わった通りのこともあるけど、そうじゃない場合もいっぱいあっておかしいぞ?
とか
いや、この説明はおかしいくないか?
といった経験が学生時代にある方も多いのではないでしょうか?
分かりやすい授業にはこういった現象が起こりません。
筋の通った説明でスッと理解できるのが分かりやすい授業です。
無駄がない授業
意外と思われるかもしれませんが、たくさんのことを教えてくれる格子・授業が優れている講師・わかりやすい授業ではありません。
正確には、本当の意味で“最高に良い”ものではありません。
私は、講師の腕は「いかにたくさん伝えるか」ではなく、「いかに内容を切り捨てるか」にあります。
要するに、生徒のレベルに合わせて、必要な部分だけをきちんと教えられるのが優れた講師であり、わかりやすい授業になります。
矛盾がない授業にも絡みますが、その生徒にとって過剰な内容や不要な部分を切り取って論理的に矛盾のない授業を分かりやすいと感じます。
もちろん、無意識的に、なので、無駄が無くてわかりやすいな~ということは実際に授業を受けていてもなかなか気づかないのですが(笑)。
難しい言葉がない授業
私の主観ですが、
一流の講師は難しいことを簡単に教え、
二流の講師は簡単なことは簡単に、難しいことは難しいまま教え、
三流の講師は簡単なことを難しく教える
と考えています。
難しい内容を、それを分からない人に分かるようにかみ砕いて教えられるのは非常に難しいです。
その中で、よりシンプルに、より簡単に教えられるのは分かりやすさに直結します。
分かりやすい授業のメリット
分かりやすい授業がどんなものかを抑えておくと、分かりやすい授業のメリットも見えてきます。
当たり前かもしれませんが、分かりやすい授業のメリットを紹介していきます。
定着までが速い
私の考えでは、点数が上がるまでの工程は、
理解する⇒自分一人で何とか解ける⇒定着する
という3つの段階が必要です。
私が授業をする場合は、生徒の「わかった!」というリアクションを引き出すことに全力を注いでました。
わかった?という問いかけに対する返答ではなく、なるほど!のリアクションです。
私の経験上、このリアクションを引き出すことができたら第1段階の「理解」のステップはその場でクリアです。
これができるとその先が本当に楽なんですが、「理解」の中でもここが一番難しい(笑)
第3段階の「定着」まで進めば、しばらくは忘れないし、安定して問題も解けるようになります。
分かりやすい授業では、理解しやすいため、自分のものになる、すなわち、定着するまでが速くなります。
定着が早ければその分成績も上がるので、非常に大きなメリットです。
誰かに伝えたくなる
人間だれしも、大小の差はありますが、わかってもらいたいという欲求や、自分の知っていることを誰かに伝えたい欲求があります。
分かりやすい授業で理解したものは誰かに伝えたくなります。
これが実はかなり重要で、だれかに教えるという行為は学習効果がめちゃくちゃ高いんです。
教えることで復習になるだけでなく、教えるためにはある程度のレベルに到達する必要があるので、自分にかけている部分が浮き彫りにもなります。
一見遠回りに見えるかもしれませんが、誰かに教えるという子とは非常に良い勉強になるのです。
分かりやすい授業は分かりにくい授業よりもはるかに「他人に教えること」のきっかけになりやすいです。
自分で塾講師は向いていると思っているのですが、その理由はこの伝えたい欲求です。
私はとにかく教えるの大好き人間なので、ほとんど給料の計算をしたことがありません(本当です)。
教えるという自分の好きなことをやってるだけなのになぜお金もらえるんだろう、というテンションです(笑)
私の例は極端ですが、教えたい・伝えたいという欲求はだれしも持っているものだと思うので、そこまで結び付けてあげられる授業は本当に良い授業だと思います。
勉強の楽しさを実感できる
何事においてもそうですが、できるようになるとうれしいし楽しいですよね。
分かりやすい受業は、分かるとできるの経験に最適です。
そして、継続して分かりやすい授業を受ければ、勉強も楽しくなり、自分からどんどん勉強するようになります。
分かる⇒できる⇒楽しい
のサイクルが出来上がれば、あとは成績が上がるしかありません(笑)。
このサイクルの完成に分かりやすい授業は大変役に立ちます。
「分かりやすい」から生まれる思考力の低下
ここまで、分かりやすい授業の良い面を紹介してきました。
様々な塾や予備校で、分かりやすい授業!と銘打っている授業もたくさんありますが、分かりやすいことにも弊害があります。
もちろん、ある程度分かりやすいことは塾としては絶対に必要ですが、とにかくわかりやすいだけ、という授業にも難ありです。
そのあたりを紹介します。
※繰り返しますが、分かりやすいは絶対条件ですが、ただ分かりやすいだけではよくないこともある、という内容です。
わからなかったらとりあえず聞こう
わからないことに直面した時、皆さんはどのように解決するでしょうか?
最も安心なのは、「わかる人に聞く」ことだと私は思います。
学生時代はわからないことは信頼できる先生に聞きに行きましたし、塾講師時代も、「わからないことがあったら分かりやすく教えるからいつでもおいで」と言っています。
もちろん、疑問を解決するのは大事なのですが、これを続けると
わからない→とりあえず聞きに行こう
という行動が染みついてしまいます。
勉強に慣れてなくて、解決方法が分からない場合はこれでも構わないどころか、むしろ推奨です。
しかし、ある程度勉強していて、ある程度のレベルに到達しているにも関わらす、この状況なのは考え物です。
なぜなら、思考力を鈍らせてしまうからです。
考えないことが習慣化してしまう
わからない→聞きに行こう
が自分の中で成立しすぎてしまうと、「自分で考える」という能力が身につかなくなってしまいます。
「わからないなら聞けばいい」が、いつの間にか「聞けないから後にしよう」になってしまいます。
わからないものに直面した時、聞きに行くしか解決方法がない場合はその後の苦労は明らかです。
問題を自力で解決できないからです。
もし、身近に聞ける人がいなかった場合はどう解決すればいいかわからなくなってしまいます。
保護者目線ではなかなかわからないことではありますが、”良い塾=とにかくわかりやすい授業”というわけではないということを保護者が知っているのが大事だと思います。
「わかりやすい授業」のデメリット
これは塾に限らずどんな授業でも言えます。
基本的な原理原則はもちろんわかりやすいに越したことはありません。
しかし、あらゆることまで、「全部授業を聞けば解決、それがすべてだよね」という状態になってしまったら、初めて見る問題も解けなくなってしまいます。
解けないどころか、自分でわからない問題に取り組む経験すらなくなってしまいます。
疑問が解決できないことは、それ自体は非常に大きな問題ですが、疑問への取り組みが分からないことも問題です。
「わかりやすい授業」を120%活かす保護者のできる3つのフォロー
思考力の低下はレベルが高い話になるので、もしかしたら、多くのご家庭ではあまり気にしなくてもいいかもしれません。
見下しているわけではなく、新しい問題に自力で取り組むということは私たちが思っている以上に難しいのです。
そもそも、大人だってできていない人、たくさんいるんじゃないでしょうか?
むしろ、自力できちんと考えることができている大人の方が少ないはずです。
では、どのように塾を活用すれば自力で考えることができるようになるか、どうすればわかりやすい授業をうまく活用できるかを、保護者ができることという視点で紹介します。
お子さんが自分から新しい問題に取り組めるようにフォロー
塾の授業ではわかりやすい公式・考え方を教えてくれます。
それらの復習は絶対に大事です。
それがきちんと完了した後に、塾の授業では扱わなかった問題に取り組む癖をつけてください。
そして、まずはできるだけ自力で取り組むようにしてみてください。
わからなかったらすぐに聞く、という癖をつけなければいいので、意識的に考える時間をつけるだけでも大きく変わります。
もし、そのためにお子さんが「問題集が欲しい」と言ったら是非買ってあげてください。
高校生の問題集は2000円前後で買えるものが多いので、自分の子供が10代のうちから問題解決能力を鍛えるための投資、と考えたら信じられないくらい安いと思います。
それでもわからなかったら聞けばいいのです。
わからない→聞く
ではなく、
わからない→考える→聞く
というサイクルを作ればいいのです。
もちろん、考えるだけでなく、「調べる」や「同じような学力の友人と議論する」などの工程も含むとより良いと思います。
「教えてください」という質問をやめられるようにフォロー
質問するときに、「分かりません」という聞き方をやめるようにしてみてください。
「私はこう考えたんですけど、うまくいきませんがどこが悪かったのでしょうか?」
「こういう開放が使えると思っていたのですが、なぜ宇なくいかないのですか?」
などと自分で考えたことを伝えるようにしてみてください。
保護者の方がこれを意識させるのは非常に難しいのだと思いますが、家庭の中でできることがあるとしたら、「なぜ?」を繰り返すことです。
ふーん、で終わってしまいそうな会話を、
「なぜそう思うの?」
といった問いかけをし、考える癖、考えたことを伝える癖をつけることができるように対話をしてみてください。
あくまでも会話の中で、です。
面接や授業のようになってしまうとお子さんも息苦しくなってしまうと思うので(笑)
保護者自身が新しい勉強を始める
これは直接的なフォローではありませんが、親である保護者の皆さんが勉強している姿を見せるのです。
これみよがしにする必要はありません。
子供は意外と親を見ているものなので、勉強を継続していれば、自分の親は勉強していることに気づきます。
そして、継続していることにも気づきます。
一番身近な大人である親が勉強を続けているのを知れば、子供も「勉強は必要なんだな」ということを感じ取ってくれます。
私の親は常に何か勉強し、仕事で役立つ資格も取っていました。
祖父からは、「人生は最後まで勉強だ」とよく言われました。
本屋に行くと、祖父も「ボケ防止だ」と言いながら漢字の本などを買っていたのが記憶にあります。
少し脱線しましたが、口ではなく行動で示すことです。
その中で、自分で考えてやってるよ、といった話ができるとなおいいかもしれません。
まとめ
「わかりやすい授業」は基本的にはいいものです。
いいものなんですが、そこにもデメリットはあります。
ある程度のレベルまでは基本的には意識しなくてもいいのですが、いつかは自力で問題を解決しなければならない時期が来ます。
その時のための準備を、まずは保護者の皆さんができている、という状態が好ましいのではないかと思います。
子供のやろうとしていることに、親である皆さんは理解を示してほしいと思うので、ただ授業を聞くだけのフェーズよりもさらに先、そこでのフォローを知っていただければと思います。